窓に影2

 歩は視線を逸らして頭をポリポリかきながら、

「俺、恵里のこと何にも知らないのかもな」

 ぽつりと呟く。

 愁いを帯びたその表情に、ドキッとしてしまった。

 意地を張っていたのに、フォローをしたくなる。

「何言ってんの。もうずっとお隣さんでしょ?」

「そうじゃなくて」

 視線が私に戻ってきたと思ったら、一歩こちらに近づいてきた。

 スプリングの力でグラッと軽く揺れ、巻き髪が跳ねる。

「俺、恵里の気持ちが全く読めない」

「は?」

 そんなの、私だって一緒なのに。

 歩の気持ちなんて全くわからない。

 私を本当に好きなのかさえ、疑ってしまうほど。

「それに、恵里、自分がどうしたいとか全く言わないし」

「だってそれは……」

 自分の性格とか、今までのキャラとか、歩から言ってほしい願望とか、いろんな要因が重なって言えなかった。

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