窓に影2

「あ」

 忘れていたことを思い出して、私は高いところから突き落とされたように不安に襲われた。

 忘れていたこと。

 いや、もしかしたら彼は意図的にそうしなかったのかもしれない。

 私も、歩も、一回たりとも口に出して言っていないのだ。

 付き合おう、とか。

 彼氏・彼女になって、とか。

 これから私たちがどのような関係でやっていくのか、明確にされていない。



 歩の熱と匂いが残るベッドに潜り込むと、胸がミシミシと締め付けられた。

 幸せと、不安で。



 大丈夫だよね?

 気持ち、繋がってるよね?

 信じたい。

 まさか、また一晩限りの愛人関係だったとか……?

 そもそも、こうなったのは誕生日プレゼントだった。



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