窓に影2

「泣いてんのって、俺のせい?」

 低い声が頭上で響く。

 私は無反応に努めた。

 歩のせいにしたくなかった。

「何も言わないってことは、俺のせいなんだな」

 私のことは何もわからないとか言っていたくせに、裏をかくのは得意らしい。

 それでも私は無反応に努めた。

「なんでも正直に言えよ。不満があるならいつもみたいに突きつけろよ。恵里、付き合い始めてから何も言わなくなったから……俺、不安なんだけど」

 意外な言葉に、私は顔を上げた。

 歩が、泣きそうな顔をしていた。

 なんて顔してんのよ、歩のくせに。

「あたしだって同じだもん」

 困ったように笑った彼は、一旦体勢を整えた。

 壁に寄りかかり、脚の間に私を置き、後ろから抱きしめる。

 腕を腹に回しながら、頬に唇が触れたのに気付いた。

「不安に思ってること、今から何でも全部言え」

「やだよ。歩にわがまま言いたくない」

「バーカ。お前がわがまま言っていいのは俺だけなんだよ」


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