窓に影2
私は歩に手を引かれるまま部屋を出る。
階段を下りて、向かうのはどうやらリビングらしい。
ドアを開けると、父と母がこちらを向いた。
「おじさん、おばさん」
「どうしたの、歩君。改まっちゃって」
母の甲高い声がテレビの音を掻き消す。
そしてにっこりと笑って、
「結婚する、とか言い出すんじゃないでしょうね?」
なんて言うもんだから、隣の父がブフッと飲んでいたビールを噴き出した。
「はは、それはまだ早いよ」
爽やかスマイルを作る歩。
「え? じゃあまさか子供ができたなんてこと……」
更にぶっ飛んだ母の言葉に、父がむせる。
さすがの歩も笑顔が引きつる。
「そんなわけないでしょ!」
私が否定すると、父は安心したように布巾でこぼしたビールを拭いた。