窓に影2
6・初恋の男
夏休みも中盤に入って、私は暇な日中を短期のバイトで潰していた。
バイトはファミレスの店員で、ケガをしてしまった人の代わりに十日間だけ手伝うというもの。
最後のバイトが終わった8月10日。
夕日を浴びながら、帰宅途中のコンビニに立ち寄る。
雑誌を立ち読みしていると、後ろから声をかけられた。
「あれ? 恵里?」
振り返ると、そこには懐かしい顔。
俗に言うイケメンで、オシャレなお兄さん。
「わた兄!」
わた兄とは、歩のお兄さん、西山亘(わたる)。
大学三年生で、東京の一流大学に通っている。
大学も夏休みに入り、帰省しているらしい。
「久しぶりだなぁ。まあキレイになっちゃって」
その言葉に、条件反射で照れてしまう。
わた兄は私の初恋の人なのだ。
「いつ帰ってきたの?」
「一昨日だよ」
不謹慎にも私の心はときめきだす。
だって、相変わらずカッコイイし。