窓に影2


 わた兄は慣れたようにエンジンをかけ、車を走らせた。

「どこ行くの?」

「どこに行こうか」

 行き先は未定。

 わた兄と密室に二人きりなんて初めてで、心地よい緊張感が体を巡った。

 私はやっぱり浮気性なんだろうか。

「わた兄、歩と何かあったの?」

「え? 何かって?」

「ケンカとか。なんか昨日から不機嫌なのよ、あいつ」

 わた兄はウインカーを出しながらクスクス笑った。

 やっぱり何か心当たりがあるらしい。

「ケンカなんてしてないけど、俺のせいなのは事実だね」

「どうして?」

「それは歩のために言わないでおくよ」

「何それー」

 車は夜の道を進む。

 だんだん信号は少なくなってきて、山を登りだした。

 見覚えのある風景。

 夜景スポットの山だ。

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