窓に影2

 出発してから三十分、車は駐車場に止まった。

「わー! 半年振りだぁ」

 伸びをしながらそう言うと、わた兄が驚いた顔をした。

「来たことあるんだ?」

「うん。半年前、たしかバレンタインデー。歩と当時の彼女と、あたしの当時の彼氏でダブルデートだったの」

「なんか、複雑だな」

 ほんと、複雑だった。

 だって当時の私たちは浮気相手だったし。

 思い出すとなんだか自信がなくなってきた。

 歩の当時の彼女は本当に美人な女子大生で、歩と部屋にいれば勉強を教えることだってできただろう。

 私なんて、役立たず。

 部屋にいてもゴロゴロしてるだけ。

 こんな私のどこが好きなんだろう。

 考えても答えは出ず、ため息が出た。

「何か悩んでんの?」

 わた兄の優しい声がして、笑顔を取り戻す。

「別に何でもない。早く行こう、夜景見たい!」

 そして展望台へと向かった。

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