窓に影2
展望台は相変わらずカップルばかりで、熱帯夜だというのにベタベタしている人が多い。
カップルとカップルの隙間を陣取って地上を見下ろす。
わぁっと広がる地上の星。
夏の淀んだ空気を通して迫り来る夜景は、半年前とはやっぱり少し違って、キラキラというよりギラギラしているように感じた。
その景色に圧倒される。
「キレイ……」
「だね」
横に立つわた兄。
これが歩だったら、周りのカップルたちのようにベタベタするのだろうか。
歩とここにいることを想像しながら景色に見とれていると、わた兄が夜景とは逆を向いて欄干に寄りかかった。
「恵里はどうして歩を好きになったの?」
「え?」
ちょうど歩のことを考えていたから、心を読まれたような気がした。
わた兄の視線の先には星が輝いていた。
「どうしたの、急に」
「恵里は歩みたいなカタいタイプ、苦手だと思ってたから不思議だなって思って」