窓に影2

 確かに、家庭教師としてうちに通い始めるまでは、歩に興味なんてなかった。

 どうしてなんて聞かれると……

「なんでだろ。自分でもわかんない」

 私の答えにクスッと笑う。

 理由はわからないけど、歩が好きなのは確か。

「あたしが相手じゃ歩が心配?」

 意地悪でそう聞いた。

「いや、逆。恵里が心配だね」

「え?」

 生ぬるい風が吹いて、髪がなびいた。

 わた兄が真剣な顔をした。

「恵里はもっとイイ男を捕まえると思ってた」

 何言ってるんだろう。

 歩はダメな男だと言われてる気がして、さすがの兄でも彼女としては腹が立つ。

 彼から目を離して夜景で視界を埋めると、背中に、腕に、お腹に、人の体温を感じた。

 わた兄が抱きついているんだというのは、嫌でもわかった。

「ちょっと、わた兄?」

 振り解こうとしたけど、ビクともしない。

 それはきっと、思ったより力が入ってないから。

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