窓に影2
「恵里、俺と浮気しない?」
耳元で聞こえたのは、歩より少し高いかすれた声。
わた兄の体温も手伝って、胸の奥からじわりと何かがあふれ出す。
それは昔の恋心だったり、思い出だったり。
わた兄はずっと私の憧れで、お兄ちゃんで……。
小さい頃、いつも手を繋いで家まで送ってくれるのが嬉しかった。
私が抱きつくと、よしよしって頭を撫でてくれるのが好きだった。
キラキラした目を細めて笑う顔が好きだった。
当時と今では、抱きしめる意味が変わってくる。
「何言ってんの、わた兄にだって彼女くらいいるでしょ?」
「いるよ。でも本気じゃない」
本気じゃないって……咎めようと思ったけど、自分にもそういう経験があるだけに何も言えなかった。
「俺はね、何一つ歩に劣ってるなんて思ったことないよ」
わた兄の唇が耳に触れて、体がピクッと震える。
唇は降下して首へと降りていった。
ゾクゾクと私の意識を麻痺させていく。
確実に確信犯。