窓に影2
以前、歩に言われた言葉が頭に浮かんだ。
“本当に嫌なら殴るなり蹴るなりして拒否しろよ。泣きながら止めてって言えよ”
わた兄を殴るなんてできないよ。
どうしよう。
抱きしめられて、嫌じゃない。
与えられる刺激に、指先まで痺れている。
どうしよう、歩――……。
頭の中がパニックになった頃、わた兄が首元でクスッと笑った。
そして私は腕から開放された。
「あいつ、警戒心強いな」
「え?」
左の首元にピトッと指が触れる。
「キスマーク。しかも、割と新しい」
恥ずかしさに顔が赤くなった。
慌てて手で隠す。
「いつも付けるの?」
確かにいつも付けたがるが、こんなわかりやすいところに残されたのは初めてだった。
黙秘すると彼はそれを肯定だと受け取ったらしい。
「ふーん。意外と独占欲強いんだ」