窓に影2

「歩のこと、好きなんだ?」

「……うん」

 まさか今になってわた兄に言い寄られるなんて思わなかった。

 でもいつものように笑っているわた兄を見ると、やっぱり冗談だったんだと思う。

「理解できねえ。絶対俺のほうがイイ男だと思うのに」

「それはそうかもしれないけど」

 でも、私が好きなのは歩。

 理屈じゃ説明できない。

「そう思うならさ、ほら」

 私に向かって両腕を広げるわた兄。

「冗談やめてよ」

「冗談じゃないって」

 その時、わた兄の携帯が鳴り始めた。

 広げていた腕を下ろしてポケットの携帯を取り出す。

 画面を確認すると顔をしかめてチッと舌打ちした。

「タイミングいいヤツだよ、ほんと」

 と言ってそれを耳に当てた。

「今すぐ帰れ」

 と、私にも聞こえた。

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