窓に影2
翌日、部屋で雑誌を読んでいると母の甲高い声が聞こえてきた。
時計を見るとまだ午後2時で、歩が来るにはまだ早い。
来たのが誰だか予想がついたところで、体に力が入ったのがわかった。
「よっ」
やっぱり、来たのはわた兄だった。
会わないようにしなきゃと思った矢先だったのに。
わた兄は何事もなかったかのように笑顔でテーブルの脇に座った。
「どうしたの?」
「恵里が暇してると思って」
確かに、暇ですけど。
「それと、歩が来る前に口説こうと思って」
爽やかな笑みでサラッと言ってのけないでいただきたい。
「何言ってんのよ。あたしは歩が好きなの」
「じゃあ俺のことは嫌い?」
「嫌いじゃないけど……」
「それじゃまだ望みがある」
そんな言い方ずるい。
弟共々西山兄弟は揃ってずる賢いらしい。