窓に影2
ここで助け船、母が部屋にやってきた。
「ちょっと早いけどおやつよ」
と、昨日作ったシフォンケーキと紅茶を持ってきた。
「ありがとうおばさん。おばさんのケーキ、中学以来だよ」
「あら、もうそんなに経つかしら。懐かしいわねぇ」
いっそのこと母もこの部屋に残ってほしかったが、虚しくも「ごゆっくり」と言って出て行ってしまった。
歩、早く帰ってきて。
「そういえば歩、恵里の家庭教師やってたんだって?」
「うん。6月まで」
「そっか。それがきっかけなんだろ」
「まあね」
歩と同じように大口を開けてケーキを頬張る。
こういうところは似てると思う。
「でもわかんねえな、どうして恵里が歩なのか」
目を伏せて紅茶をすするわた兄もまつげが長くて、血の繋がりを実感した。
「似合わないって言いたいの?」
「うーん。そうだな。歩に恵里はもったいないと思うよ」