窓に影2

 とりあえず口説きに来たというのは本当らしい。

 でも本気なら、昨日みたいに恐ろしいほどの色気を使って、私を完全に麻痺させてからカプッと食いつくんだと思う。

 ちくしょう、西山兄弟め。

 色気が武器なところも似ている。

 カナママの教育だろうか。

 ただ、歩の好きには重みがあって、わた兄の好きはふわふわと軽い。

「もう一回言うけど、あたしは歩が好きなの。わた兄とは付き合わないもん」

「あーあ。また振られちゃった。昔はあんなに俺のこと好きだったくせに」

「なっ……!」

 気付いてたんだ。

 まあ、わかりやすかったと思うけど。

「俺も恵里のこと好きだったんだよ、ずっと」

「はぁ? 嘘ばっか。女コロコロ変えてたくせに」

 そう。

 わた兄はモテたから、高校時代は見るたびに女が代わっていた。

 それがまた魅力的だと思っていた。


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