窓に影2

「だってまだ子供の恵里に手を出すわけにはいかないと思ってたからさぁ。もう高校三年生だし、解禁」

 解禁って……。

 タイミングうかがってたの?

「そして気付いたら歩に取られてるし、兄貴としては悔しさこの上ないわけ。わかる? この切なさ」

「わかりません」

 私のことを好きと言っても、妹としての好きだと思う。

「酷い女だな。人のファーストキス奪っといて」

「はぁ?」

「え、覚えてないの?」

 頷くと、わた兄はテーブルに頬杖をついて私の顔をじっと見てきた。

「たしか、恵里が幼稚園で俺は小学校入った頃だったな」

 もう十年以上前のことじゃない。

 覚えてないというより、物心つくかつかないかの頃だ。

「そんなの、数に入るの?」

「俺にとっては思い出の初チューだぞ。あーショック。恵里は覚えてないんだ」

 拗ねた顔をして寝転んだわた兄。

 本当に居座る気らしい。

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