キミ予報
「じゃあ、私帰るね」
にこりと微笑んでカバンを肩にかけた黒澤の腕を、
俺は無意識に無理やり掴んでしまった。
「今帰ったら死ぬぞ!」
2人しかいない教室に、俺の声が響き渡る。
「……」
目を丸くして驚く黒澤。
時計が一秒を刻む音が、やけに大きく聞こえる。
「……わりぃ」
俺はそっと黒澤の腕を離し、深く深呼吸をした。
「……か、帰るね」
黒澤の声は微かに震えている。
教室を飛び出していく黒澤を、引き止めることはできなかった。
俺は黒板の上に掛けられている時計を見る。
授業中に何度もにらめっこした、シンプルな時計。
その針は18時37分を差していた。
あと、30分もない……。