キミ予報
とある予報
俺は三木の数学の授業が嫌いだ。
甲高い声が耳障りで、俺はいつもならイヤホンでラジオを聞いているところだ。
だが今は、ラジオをつけても黒澤の予報ばかり。
黒澤か三木か……。
俺は机の中にある小さなシルバーのラジオのスイッチを、カチリと入れる。
イヤホンを耳に差し、俺は机に突っ伏した。
『……ザ……ザザ……
12月7日12時39分23秒。
黒澤遥さんのニュースをお知らせします。
たった今、美術室からガラスの花瓶を運んでいた途中に階段から転落。
割れたガラスの破片が足に刺さり、大量出血。
かなりの重症です。
……ザザ……ザ……』
カチリ。
俺は思わず伏せていた顔を上げ、斜め前に座っている黒澤の背中を見た。
彼女は長い黒髪を耳に掛け、さらさらとシャーペンを動かしている。
ラジオなんて、聞くんじゃなかった。
ガラスの破片が足に刺さるだと?
12月7日って……。
……今日じゃねぇか。