ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
徐々にこちらへと近付いてくる。

足音ではなく、馬の固い蹄の音だ。

「中位クラスの魔物に命令されてるから、中には絶対入ってこないなんて言ってたの誰よ」

私は文句を言いながら、横で待機しているエドを睨んだ。

「僕は別に〜絶対に入ってこないなんて〜言ってませんよ〜?」

エドは全く動じずに、いつもと変わらず唄っている。平気な顔をしながら、ああ言えばこう言う男だ。

「エリス、君も灯りを」

「あ! うん」

アレックスに言われ、私は慌てて光属性の灯りを点けた。

「アレックス、まさかまた戦う気?」

「無論。同じ過ちを二度と繰り返さないのが、俺の信条だ」

(過ちって……)

私は既に怒る気にもなれなかった。この人と私は恐らく一生、相容れない存在なのかもしれない。
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