ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
「い、痛いですよぉ〜アレックスさん〜」

抱き締められたエドはアレックスの腕の中で、苦しそうに藻掻いている。

「おお、そうかスマン。あまりにも感動が大きかったもので、つい…」

頭をポリポリと掻きながら、アレックスはエドから身体を離した。

しかし。

「ちょっとあんた、なんで泣いているわけ?」

私は冷めた目線をアレックスに投げ掛けた。この状況で泣くような理由など、ないはずなのだが。

「断じて泣いているわけではない! 涙は心の汗だと俗世間では言うではないか。これはあまりにも感動が大きかったために、大量の汗が噴出しているだけなのだっ!」

興奮しながら拳を振り上げて何かを力説しているようだったが、全く意味が分からない。それになんだかいろいろと、間違っているような気もするし。
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