ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
言われて耳を澄ませてみると、確かに洞窟の奥から再び複数の足音が聞こえてきた。

多分また奴らだ。術の効力がとうとう、完全に切れたのだろう。

「迎え撃つぞ」

アレックスもそれに気付いたのか、剣を抜き構えだした。

「どうせこうなるんだったら、さっきのうちにヤツらを片付けておけばよかったんじゃないのよ」

私も渋々構えながら、しかし、背を向けているアレックスに文句を言ってやった。

「戦場において正々堂々と対等に剣を交えるのが、剣士たるものの誇りでもあり努めなのだ。だから先程は、やむを得ぬ事態だった」

魔物相手に対等に剣を交えるなど、何を言っているのだろうかこの男は。私はうんざりし、深々と溜息を吐くしかなかった。

(こんな狭いところでの戦闘って、正直苦手なのよね)

あまり気が進まなかった。なんとかしてこの場をやり過ごしたかったのである。

だがアレックスのことだから「無論戦う!」とかなんとか、我が儘を言うに違いない。

と、突然良い方法を思いついた私は、

「アレックス」

その背中に声を掛けた。
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