ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
「あ、えーっと……その、私たちは討伐隊じゃなくて……」

「俺たちは魔王を倒しに来たのだ。そこを退いてもらおう!」

私の心中とは裏腹に、ビシッとリチャードに指を突きつけ、アレックスは堂々と声高に宣言した。

瞬間私は血の気が引き、頭を抱えこんでいた。これで完全に相手を怒らせてしまったかもしれない。

だが。

「……ほう。魔王様を、ですか」

リチャードの細い目が更に細くなっただけで、それ以上殺気が膨れあがる気配はしなかった。

「主様からは、どのような客人でもおもてなしせよと、仰せつかっておりますので」

顔に似合わず優雅に、ごく自然な動作で胸に携えていたシルクハットを上へ向けると、右手に持っていたステッキでそのツバを軽く2〜3回叩いた。
< 135 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop