ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
魔王伝説があるのなら、当然の如く英雄伝説もある。

その伝説では、魔王を倒したのは英雄だということになっている。

魔王が放った剣を素手で受け止めたとか、放った術を一瞬ではじき返したとか、魔王が率いる軍勢を瞬時に一掃しただとか、どれもこれも魔王伝説と類似した話ばかりだった。

無論私は魔王伝説同様、そんな胡散臭い言い伝えを信じてはいない。

「アレックスさんて〜実は凄い人だったのですねぇ〜。そんな方とお知り合いになれて〜光栄ですぅ〜」

「はっはっはっ。しかしエド、俺が凄いわけではないぞ。全ては先祖の偉業から始まったのだからな」

呆気に取られて言葉が出ない私の横で、エドは尊敬の眼差しをアレックスに向けていた。分厚い眼鏡で隠れていても分かるほどに熱い視線だった。アレックスのほうも元から高い鼻を更に高くして胸を反らし、実に爽やかな笑顔で返している。
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