ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
私は内心焦った。

「ちょっとあんた、何してんのよっ!」

再び声を掛けてみるが、その背中を見て私はハッと気付いた。

(震えている?)

かなり尋常でない震え方をしている。

(ま、まさか……攻撃に当たってるんじゃ)

慌てて下に目線を移してみるが、血溜まりらしきものはない。怪我を負っているわけではないようだ。

震えが突然ピタリと止んだ。そしてアレックスはこちらを振り向くと、一気に私たちのほうへ移動してきたのである。

(なんでこっち来んの!?)

私は予想外のその行動に驚き、動けずにいた。

近付いてくるアレックスを呆然と見詰めていると、頭上で剣を振り上げる姿が目に飛び込んできた。
< 149 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop