ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
どごっ!

私たちの背後にあった壁に、アレックスは勢いよく突っ込んできた。

物凄い音を響かせてその一角が崩れ落ちる。そして再び後ろを振り向くと、スケルトン・キラーの群れの中へ何の躊躇いもなく飛び込んでいったのである。

上下左右斜め、全くでたらめな軌道の動きをしていた。

それを見ているリチャードも、流石に困惑している様子だった。傀儡であるはずのスケルトン・キラーや上空から攻撃している怪鳥でさえ、その動きには翻弄されているのだ。

私もその場で座り込んで、動き回っているアレックスを呆然と眺めているだけだった。

間一髪であの攻撃を避けることはできた。が、自分の心臓がまだ早鐘のように鳴っているのを感じていた。

アレックスの剣で飛び散った破片により、腕や顔に多少の傷が付いたものの、その程度ですんだことは幸運かもしれない。まさか自慢の逃げ足の早さが、ここで役に立つとは。

(それにしても)

先程のアレックスの目。

涼しい眼差しの中にあるいつもの熱い光が、そこにはなかった。一欠片の感情でさえ見えない、濁った瞳だけである。

(アレって、もしかして)
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