ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
アレックスはリチャードを踏み台にすると、そのまま背面へ跳躍した。

コンフュージョン(混乱)により、理性の箍(たが)が外れているからなのか。

そのせいで、人間が疾うに無くしてしまった『獣』としての本能が目覚めているのか。

あるいは恐怖や痛みなどといった感覚までもが、失われているからなのか。

原因はよくわからないが、その跳躍力が尋常でない高さだった。

アレックスは剣を振り回して正面からの攻撃をうまく交わしながら、旋回している怪鳥目がけて突っ込んでいった。予想外の動きで明らかに戸惑っている怪鳥たちを次々に斬りつけていくと、またもやそれを踏み台にして下へ真っ直ぐに落ちていったのである。

しかし剣は空を斬り、そのまま階段上に落下した。リチャードが空中へ軽く飛んで避けたのだ。

「光射刺箭(レイ・プッセ・プファ)!」

この瞬間、私はすかさず光属性の矢を放っていた。
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