ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
「ところでアレックス、あなた本当に魔物じゃないのよね」

「無論だ」

人間にとって精霊石や術文は、術使用時に必要不可欠なものであるが、異種族である魔物には無用の長物だった。

しかし彼らが「人間のフリ」をする手段の一つとして、それらを利用することがあるのだという。

精霊石や術文というのは、術力自体がパワーアップするためのものではない。

元来ヒトの持つ「精神エネルギー」というものは、魔物のように精霊力を具現化できるほどの強い力はなかった。その「精神エネルギー」を精霊石で増幅し、術文を介して一気に放出するわけである。つまり「人間の精神エネルギー」を魔物レベルにまで引き上げるための、いわばエネルギー増幅補助装置のようなものなのだ。

この石や術文に「魔物の精神エネルギー」を注ぎ込んでも認識されず増幅できないのだが、石には属性の紋様が浮かび上がってくる程度の反応はあるらしい。

魔物はそれを利用して人間に化けるという。もし術文が唱えられ、尚且つ精霊石にも反応するのであれば、その術士を『魔物』だと真っ先に疑う者はいないだろう。

だからといって、そこら辺にいる人間全てを疑っていたら切りがないし、他人を疑ってばかりというのも、あまり気持ちの良いものではない。
< 161 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop