ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
「ごめんごめん。口を滑らせて、ついうっかり本当のことを言っただけだから」

私は誤魔化し笑いを浮かべつつ、慌ててフォローした。しかし何故かエドはまだ恨めしい顔つきで、こちらを見詰めたままだった。それにしても変なところで繊細な男である。

「もういいです〜。エリスさんに悪気がないのは〜分かってますから〜。それじゃ僕〜取り敢えずかけてみますね〜」

少し拗ねている様子のエドだったが、そう言うと弾いている楽器の曲調を変えた。

「我が守護者レイよ。汝の名の下に集いし輝きの時を我に与えたまえ。この大地を照らす癒しの陽光を心に保ち民の間へと…」

エドがキーワードとなる言葉を唄い終えると、

「ん? おお…」

アレックスが突然声を上げ、身体を揺らし始めた。

「アレックス、身体を動かせるようになったの?」

「うむ、少しだけだが。それに体中もキシキシと痛んできたな」

「感覚まで戻ってきてるのね。思ったよりも回復しているわ」

間もなく唄を止めたエドも手伝い、私たちはアレックスをゆっくりと起こし始めた。肩を貸して起き上がらせるのだが、防具のせいか結構重かった。剣士たちはいつもこんな重い物を着込んでいるのか。
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