ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
「君たち、すまんな。世話を掛ける」

流石のアレックスも珍しく、しおらしいことを口にした。

「何言ってるんですか〜。僕たちは仲間(パーティ)じゃないですか〜」

「そうよ。困ったときはお互い様じゃない」

時には連携して助け合う。例えそれが一時的なパーティであっても、何ら変わりはないのだ。

しかし。

「よしっ! では早速魔王退治に行くぞ!」

起き上がると急に元気になったのか、アレックスはそんなことを言ってきた。なにが「よしっ!」なんだか。

「あんた、まだそんなことを言ってるの。その身体じゃ無理よ」

「これくらい問題ない。それに俺の根性パワーなら、なんとかなるレベルだしな」

私は呆れて言葉も出なかった。「根性パワー」とは一体何なのだろうか。

いや考えてみれば、アレックスが訳の分からないことを言うのはいつものことである。もしかしたら細かいことを気にするだけ、無駄なのかもしれない。

「大体アレックス、何でそんなに魔王に拘るのよ。何か恨みでもあるわけ?」

「恨みなどはない。ただ……」

一瞬言葉が途切れる。

「これは『精霊の加護』を与えられた、英雄の宿命なのだ」

その涼しげな瞳の奥に、再び熱い炎をたぎらせた。
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