ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
「村で『精霊の加護』が証明された翌日から、何故か妹が急に冷たい態度を取るようになったのだ。目線も合わせず、俺の顔を見る度に何やらブツブツと呟くようになったのだが、理由を尋ねても教えてはくれなかった」

その時のことを思い出したのか、アレックスは一瞬遠い目をした。

「俺はそんな妹との関係を修復したいと思い、親代わりでもある村長の所へ教えを請いに行った。だがそこには既に妹の姿があった。そして俺はその会話の内容を立ち聞きしてしまったのだ」

アレックスの表情が険しくなってくる。

「内容はカタトス町周辺で人間が数名、行方不明になっているという話だった。そこに魔王も関与していると、言っていたのだ」

くどいようだが『魔王』というのは、あくまでも伝説上のモノでしかない。

魔物のほうはどうだか知らないが、大半の人間は『架空のモノ』という認識であるはずなのだ。

しかし全ての人間がそうとは限らない。一部の人間では信じている者もいるらしいのである。ともすればアレックスの故郷では『実在のモノ』という考え方のほうが、常識ということなのだろうか。
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