ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
魔物と術文
「見目麗しい我が花よ。舞い降りる蝶のように、柔らかい風のように、優しく照らす光のように。包み込む暖かな眼差しで、あなたの元へと参りましょう。天から注ぐ虹の欠片、想いを伝え……」
突然、場違いな唄が流れてきた。
一体何の術なのだろうか。詩の内容から察するに『チャーム(魅了)』のような気もするのだが。
しばらく経つと唄は終わったのだが、何も起こらなかった。
「………美しい」
「は?」
ようやく呟いたエドの顔は上気しており、恍惚とした表情で階段上の魔物を見詰めている。「心ここにあらず」といった様子だったが、私は一応聞いてみた。
「エド、今の術は?」
「今のは〜術ではありません〜。僕からあの方への〜『愛の唄』なのです〜」
私はその場でガクッと崩れた。
つまり術発動用の唄などではなく、「ただ唄ってみただけ」だという。
確かに歌詞の中には精霊の名が入っていなかったし、精霊石も光っている様子はなかったけれども。
(こんな状況で、そんな唄うたうなよっ!)
叫びたくなったが、今はそんなことをしている場合ではない。私は気を取り直すと立ち上がった。
突然、場違いな唄が流れてきた。
一体何の術なのだろうか。詩の内容から察するに『チャーム(魅了)』のような気もするのだが。
しばらく経つと唄は終わったのだが、何も起こらなかった。
「………美しい」
「は?」
ようやく呟いたエドの顔は上気しており、恍惚とした表情で階段上の魔物を見詰めている。「心ここにあらず」といった様子だったが、私は一応聞いてみた。
「エド、今の術は?」
「今のは〜術ではありません〜。僕からあの方への〜『愛の唄』なのです〜」
私はその場でガクッと崩れた。
つまり術発動用の唄などではなく、「ただ唄ってみただけ」だという。
確かに歌詞の中には精霊の名が入っていなかったし、精霊石も光っている様子はなかったけれども。
(こんな状況で、そんな唄うたうなよっ!)
叫びたくなったが、今はそんなことをしている場合ではない。私は気を取り直すと立ち上がった。