ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
…んな、バカな。
精霊術の講義で、父から改めてこの話を聞かされた時の、私の感想である。
勿論『架空の物語』としてなら、それまでにも何度か耳にしたことはあった。
しかし常識的に考えてみても、一振りの剣でそんなに多くのヒトを殺すことなど有り得ないだろう。
他の記述についても同様である。
生命の樹や精霊などというものを実際には誰も見た者がいないし、何処かへ隠れてしまったという話も都合が良すぎて信憑性も薄い。
それに何故精霊たちは、『力を与えたモノ』と『与えなかったモノ』の2種類の命をわざわざ創ったのか。
結果的に後から人間に力を与えることになるのなら、最初から与えておけば良いのだ。
更に言えば、何故精霊は自分たちだけで『生命の樹』を守ろうとしなかったのか。
伝説が本当であるならば、人間と魔物の創造主である精霊が、他力本願で樹を守らせるのはおかしい。精霊石まで与えて守らせるよりは、自分で守ったほうが遥かに効率は良いと思うのだが。