ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
アレックスは今現在も入院中だが、身体のほうは大分良くなっていた。
彼の身体は一般人よりも術が効きやすいのだ。本当ならば1ヶ月くらいかかる術治療だったが、あと2〜3日くらいで退院できるとのことだった。
術医もその驚異の回復力に驚いていたが、生まれつき術には非常に効きやすい体質の持ち主だと伝えたら、珍しいことではないのか特に疑問を持たなかったようである。
なのに何故『絶対安静』なのかといえば、私たち関係者以外の者がこの病室に入ってこられないようにするためだった。
他の患者や見舞客、取り分け若い女の子たちがアレックス目当てで、「見舞い」と称して用もないのに頻繁に訪ねて来るようになったからだ。
この5日間で入れ替わり立ち替わり、ひっきりなしに様々な女性たちが毎日病室を訪問してきた。術医や看護師などからは、この部屋があまりにも煩かったために睨まれたりもした。
そこで『絶対安静』の札を使用するという案を、アレックス本人が出したのだ。私は半信半疑だったが、それ以降はピタリと訪問客が途絶えたから驚きである。
「あまりにも気持ちの良い天気だったのでな。少し外の空気にも触れてみたかったのだ」
アレックスは3階から見える町並みを、相変わらず涼しげな表情で見詰めながら答えた。
開いている窓からは、ひんやりとした心地よい風が入り込んできている。空は見事としかいいようがないくらいに、真っ青な広がりを見せていた。
しかし私の心はというと真逆で、暗雲が立ち込めている。無意識に刻印のある左腕を掴んでいた。
「アレックス、元気そうだな」
病室の扉が勢いよく開けられ、男の声が聞こえてきた。
そこにはフードを目深に被り、不気味な笑みを湛えた怪しい格好の男が立っていた。
彼の身体は一般人よりも術が効きやすいのだ。本当ならば1ヶ月くらいかかる術治療だったが、あと2〜3日くらいで退院できるとのことだった。
術医もその驚異の回復力に驚いていたが、生まれつき術には非常に効きやすい体質の持ち主だと伝えたら、珍しいことではないのか特に疑問を持たなかったようである。
なのに何故『絶対安静』なのかといえば、私たち関係者以外の者がこの病室に入ってこられないようにするためだった。
他の患者や見舞客、取り分け若い女の子たちがアレックス目当てで、「見舞い」と称して用もないのに頻繁に訪ねて来るようになったからだ。
この5日間で入れ替わり立ち替わり、ひっきりなしに様々な女性たちが毎日病室を訪問してきた。術医や看護師などからは、この部屋があまりにも煩かったために睨まれたりもした。
そこで『絶対安静』の札を使用するという案を、アレックス本人が出したのだ。私は半信半疑だったが、それ以降はピタリと訪問客が途絶えたから驚きである。
「あまりにも気持ちの良い天気だったのでな。少し外の空気にも触れてみたかったのだ」
アレックスは3階から見える町並みを、相変わらず涼しげな表情で見詰めながら答えた。
開いている窓からは、ひんやりとした心地よい風が入り込んできている。空は見事としかいいようがないくらいに、真っ青な広がりを見せていた。
しかし私の心はというと真逆で、暗雲が立ち込めている。無意識に刻印のある左腕を掴んでいた。
「アレックス、元気そうだな」
病室の扉が勢いよく開けられ、男の声が聞こえてきた。
そこにはフードを目深に被り、不気味な笑みを湛えた怪しい格好の男が立っていた。