ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
「ちょっと訊いてもいいかしら。あなたたちの村って一体なに? アレックスの能力のことといい、どういった村なの?」

「うちの村は水の精霊ウンディーネの加護を受けた英雄が作ったと言われているんだ。
だが御多分に漏れず、大抵の村民は今までそんな伝説を信じてはいなかった。
アレックスに芽生えた能力を見るまでは、ね」

「それじゃ、魔物の術を跳ね返すあの能力って一体?」

「太古の時代に魔王が現れた時、精霊がその対抗策として英雄にだけ与えた特別な能力だと、うちの村では伝えられている」

これはこの前、洞窟の中でアレックスから聞いた話と一致していた。だが私はすぐに眉を顰める。

「でも本当なの? 英雄とか魔王とかって」

「まあ普通は信じないよな、そんな話。俺にもそれが真実かどうかは分からないよ。
でも俺たちの村では、世間と少し違った内容の話が伝えられていてね。アレックスにあの能力が付いたことで、わりと村では大騒ぎになっていたんだ。
特にリアも学者魂に火が付いたというか…目の色が変わってしまってね。寝る間を惜しみながら諸々の伝承について、現在も調査している最中なんだよ」

だとしたら、リアならこの印のことも何か知っているのだろうか。手掛かりは、アレックスやディーンが故郷でこの紋様を見たかもしれない、ということだけなのだ。
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