ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
私の突然の申し出にディーンは一瞬黙り込んだのだが、直ぐに表情を緩める。

「俺は一向に構わないよ。もしかして君はリアに会ったら、その印のことでも訊くのかい?」

「ええ、勿論よ。だって得体の知れないモノが身体に付いてるのって、なんだか気持ち悪いんだもの。だからこれが何の刻印なのかを早く知りたいのよ」

私は不安要素を抱えたままで、毎日を過ごすのは嫌なのだ。一刻も早くこの気持ちを、スッキリとさせたかった。

「それじゃあエリス、エド。二人も俺たちの村に同行するということで、決まりだな。それでいいな、アレックス」

ずっと蚊帳の外だったアレックスは突然話し掛けられ、きょとんとした顔をしている。

「君たちは何を言っているのだ。俺は帰らないぞ」

「な、なんでよ!? あんた、ディーンと一緒に故郷へ帰るんでしょ?」

「だから何を言っている。俺は一言も帰るとは言っていないのだが」

詰め寄る私に対して、小首を傾げながらアレックスは眉根を寄せた。

「俺にはやるべき使命がある。無論それは魔王を倒すことだ。それを果たさない限り、俺には先祖やリアに合わせる顔がないのだ」

いつもの真面目な表情で拳を強く握り締め、アレックスはキッパリと宣言した。対して私はなおも抗議しようと口を開きかけたのだが、ディーンが肩に手を置いてそれを制止する。
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