ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
「アレックス、お前魔王に負けたんだってな」
「なっ! 何故それを…!?」
アレックスは突然、顔に動揺の色を見せた。
「さっき廊下にいた女の子たちに聞いたよ。お前、まだ魔王を倒すには力不足なんじゃないのか?」
途端彼はあからさまに、ガクリと床に崩れ落ちた。
「そう……そうなのだ。俺は魔王と対峙したにも拘わらず、全く手も足も出なかった。
身体中に戦慄が走ったかのように、動くことさえできなかったのだ。
精霊の加護を受けた、英雄の末裔であるはずのこの俺が!
なのにこのような状態で、本当に魔王を倒せるというのか!?」
アレックスは床に向かい、何やら独りでブツブツと自問自答している様子である。
先程の大袈裟な崩れ方から見れば恐らく、「魔物に負けた」という事実を完全に忘れていたに違いない。
或いは「嫌な出来事は即座に忘れる」という、私にとっては実に羨むべき特技の持ち主なのだろうか。
もっとも正確に言えば負けたのは魔王ではなく、正体不明――少なくとも中位クラス以上の魔物の女だったが。
「なっ! 何故それを…!?」
アレックスは突然、顔に動揺の色を見せた。
「さっき廊下にいた女の子たちに聞いたよ。お前、まだ魔王を倒すには力不足なんじゃないのか?」
途端彼はあからさまに、ガクリと床に崩れ落ちた。
「そう……そうなのだ。俺は魔王と対峙したにも拘わらず、全く手も足も出なかった。
身体中に戦慄が走ったかのように、動くことさえできなかったのだ。
精霊の加護を受けた、英雄の末裔であるはずのこの俺が!
なのにこのような状態で、本当に魔王を倒せるというのか!?」
アレックスは床に向かい、何やら独りでブツブツと自問自答している様子である。
先程の大袈裟な崩れ方から見れば恐らく、「魔物に負けた」という事実を完全に忘れていたに違いない。
或いは「嫌な出来事は即座に忘れる」という、私にとっては実に羨むべき特技の持ち主なのだろうか。
もっとも正確に言えば負けたのは魔王ではなく、正体不明――少なくとも中位クラス以上の魔物の女だったが。