ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
(取り敢えず、アレは仕掛けておかなきゃ)

私は立ち止まると、脇にあった茂みの中へ入り込んだ。そしてその中に隠れていた適当な木の根元へ座ると、手をかざした。

「界侵呼応(グレン・アンバ・アント)」

これは地属性で、主に狩りに使われることの多い術である。

大地との繋がりが深い個体(この場合は、この木の根元であるが)にかける術で、それを中心とした一定の範囲内を侵すモノ――つまり、外部から侵入してくるモノがあった場合、侵入者がこの場所に近付けば、この木はソレに向かって自動で攻撃を仕掛ける、という仕組みである。

ただこの術の最大の欠点は、最初から範囲内に存在しているモノには反応しないことだった。最初からここに居るモノに対しては、外部からの侵入者とは認識しないのだ。

この1週間ずっと野宿続きだった私は、この術をかけ終わってから休むのを日課にしていた。だがたまに認識せず、魔物やその辺りをうろついていた野盗に何度も襲われそうになったこともある。

それにこの術の効力は一晩ほどであり、1回攻撃しただけでも解けてしまう。攻撃を1回でも避けられたら、それで終わりなのだ。

しかし一方で、かなり役に立つ術でもある。

侵入者と判断したモノには不意打ちで襲いかかるのだ。まさかそこらへんに生えている木が攻撃を仕掛けてくるなど、普通は誰も思うまい。
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