ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
通りすがりの通行人たちはその声に驚き、数人ほどこちらを振り向いたようだったが、私はその場に固まったままでいる。

「な、な、なんで?カタトス…カタトス町って…ここはセフォネ町だったんじゃ…」

私は愕然とした。ここがカタトス町内だということは、思いも寄らないことだったのだ。

カタトス町は、故郷のハイゼン村から2つほどの町村を過ぎた先にある、比較的大きな町だった。しかもセフォネ町とは反対方向。

一体何処をどう間違って、こんな先まで来てしまったというのだろう。

私はしばらくその場に座り込んで呆けていたが、やがてゆっくりと立ち上がった。

膝に付いた土埃を手で払い落とし、肩や服の汚れも軽く叩いて払った。鏡が手許にないから確認はできないが、私自慢の肩まである栗色ストレートヘアも手櫛で整える。

「ま、ギルドなんて、何処でも一緒よね」

私は持っていた荷物を背負い、独り言を呟きながら何事もなかったかのように、中へと入っていった。

例え意図した目的地に辿り着けなかったとしても、ギルドなど何処の町にでもあるものだったし。

最初はかなり驚いていたが、冷静になってよく考えてみるとカタトス町のギルドでも全く問題はない、ということに途中で気が付いた。むしろこの町のほうが規模も大きいし、どちらかといえばそのほうが良いに決まっている。

ということでその辺りのことは、あまり深く考えないようにしよう。
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