ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
「お前、めんどうくさい」

続けて振り上げた爪の先には、光るものが見えた。

「!?」

私は異変を察知し、考えるよりも先に身体が動いていた。

だがヴォーウルフは、私が言葉を発する前に爪を振り下ろす。その軌道を描いた光が刃となり、速度を上げて私に向かってきた。

「神風護壁(ヴィン・マオ・デュウ)!」

私の発動のほうが一瞬早かった。光が当たる寸前で、防御術が完成したのである。

刃は防御壁に当たると、塀や近くの民家を切り裂きながら飛んでいった。もし術が間に合わなければ、私もあのようになっていたところだ。

しかし直接当たっていない私でも、その反動に押されて背後へ吹き飛ばされていた。仰向けで地面へ倒れてしまい、すぐに起き上がろうとしたのだが。
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