ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
「エリス!!」

私の名を呼び、大きな建物の中から父がこちらへ駆け付けてきた。

「大丈夫か!?」

「う…うん」

まだ咳は止まらなかったが、なんとか返事ができるくらいには治まってきたようだ。

「それより何でお前がここにいるんだ! ちゃんと避難しろと、言っておいたはずだろう!?」

「だって……家の近くで火が見えたから、それで心配になって……そしたら何故かこんな場所に出ちゃって…」

私が苦しい言い訳を言うと、父は途端に呆れたような顔をした。

「お前…また迷子になったのか」

「迷子って私、もうそんな年齢じゃないわよ」

ただ、家の方角を探していただけである。

「ソーマはどうしたんだ? 一緒に避難したんじゃなかったのか?」

「避難所でハンナおばさんに会ったから、預けてきた」

「ったく、お前という奴は…!」

「だって家が燃えるの、嫌だったんだもん」
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