ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
私は口を尖らせた。父たちと一緒に戦えないのなら、せめて自分の家くらいは守りたかったのだ。

「家が燃えたらまた、新しく建て直せば良いだけのことだ。だがお前は違うだろ?
お前の命はこの世でたった一人、掛け替えのない大切なものなんだぞ。それを忘れるな」

父が続けて私に説教をしようと口を開きかけた時、

「ウィルテルさん、今の音は…」

最初に父が出てきた建物の影から、もう一人現れた。

私よりは若干年上か、20代半ば程には見える男性だった。軽装備ではあったが大剣(グレートソード)を肩に担いでいるところから、剣士であることは一目で分かる。

日焼けしていて程良く筋肉のついている引き締まった身体に、隙のない鋭い眼差し。無造作に伸びた長い黒髪をバンダナで留め、全体的にワイルドな雰囲気も醸し出していた。
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