ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
「人間だ」

声が聞こえる。

「人間が、ここにいるんだ」

「この術は前に見たことがある。人間のものだ」

下位クラスの魔物とはいえ中位に近い種族なだけあって、少しは頭を使うようだ。

「人間を捜せ!殺せ!」

その号令で、ケンタウロスたちは一斉に左右へ散っていった。

このままでは、逃げる前に取り囲まれてしまうかもしれない。

そう思った私は素早く立ち上がり、なるべく音を立てないように注意しながら走り出した。

しかしケンタウロスたちの光は、私を外から囲むように散っている。その上、数もいつの間にか増えていた。もう仲間が応援に駆け付けてきたのだろうか。

(まずいわね)

既に手遅れかもしれない。完全に囲まれてしまっている。
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