ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
上半身は薄手の綿でできた服の上から胸当て程度の軽い防具を装着し、下はデニム地のパンツ、靴は革製のブーツだ。更に黒くて地味な膝丈まであるローブが、上からそれらを包み込んでいる。
両手首には、赤紫色に鈍く光っている精霊石(フェアリーストーン)を埋め込んだブレスレットを付けており、私の格好は何処をどう見ても精霊術士である。
それなのにこの公務員のオジさんは、私に改めて聞いてきたのだ。或いは小娘だと思って馬鹿にしているのかもしれない。
「あんた、かなり汚れてるじゃないか。それに何か臭うぞ」
「!にお…」
この言葉は乙女にとっては禁止用語であるが、私は本当のことが言えなかった。
ここに来る途中で付近にあったドブにスッポリと嵌ってしまったことなど、言えるはずもないだろう。
そんなわけで、私は辛うじて冷静さを装ってみた。
「ま…まぁ、その…途中、いろいろあったからね」
「別にどうでもいいが、部屋だけは汚さないでくれよ」
オジさんは手に持っていた新聞に再び目を落としながら、私に釘を刺してくるのだった。
両手首には、赤紫色に鈍く光っている精霊石(フェアリーストーン)を埋め込んだブレスレットを付けており、私の格好は何処をどう見ても精霊術士である。
それなのにこの公務員のオジさんは、私に改めて聞いてきたのだ。或いは小娘だと思って馬鹿にしているのかもしれない。
「あんた、かなり汚れてるじゃないか。それに何か臭うぞ」
「!にお…」
この言葉は乙女にとっては禁止用語であるが、私は本当のことが言えなかった。
ここに来る途中で付近にあったドブにスッポリと嵌ってしまったことなど、言えるはずもないだろう。
そんなわけで、私は辛うじて冷静さを装ってみた。
「ま…まぁ、その…途中、いろいろあったからね」
「別にどうでもいいが、部屋だけは汚さないでくれよ」
オジさんは手に持っていた新聞に再び目を落としながら、私に釘を刺してくるのだった。