ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
私は自慢するわけではないが、木登りは子供の頃から得意なほうである。村中でも一番上手かったのだ。

近所の子たちから「木登りエッちゃん」の呼び名で親しまれていたのは、伊達ではない。

しかもこの木にはまだ葉も生い茂っており、隠れるには打って付けの場所だった。

勿論見つかったら今度こそ、一巻の終わりである。しかしケンタウロスは木に登ることができないと聞いたことがあるので、見つかる可能性はかなり低いはずだ。

何故なら、木登りをしないモノが『木に登る』という行為自体を、容易には発想できないからである。

私は取り敢えず、朝まではここへ隠れることにした。

この場所も全く危険がないわけではなかったが、夜道を移動するよりは安全である。魔物のほうが人間の数倍も夜目はきくのだ。

私はふと、天を仰ぎ見た。

星々の輝きが見える。
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