ゼロクエスト ~第1部 旅立ち



「私、修行の旅に出るから!」

まだ生々しく魔物の爪跡が消えずに残っている村で、私は父にこう宣言した。

家は玄関が壊され、中は滅茶苦茶に荒らされていた。壁にはヒビなども入れられ、一部壊されている箇所もある。

ヴォーウルフが入り込んだのだ。

外にも戦闘の痕跡があり、破壊された建物や折れた大木、焼け焦げた地面などもそのまま残されていた。どうやらヴォーウルフたちは、目的地と距離があることなど一切関係なく、方々で暴れていたらしい。

だがこれでも私の家など、まだマシなほうだった。

グランドおじさんの所では、家が半焼していたのである。

ハンナおばさんは、おじさん自身がこの近辺で戦闘していたことを知ると「自分の家を燃やすなんて!」とカンカンに怒っていたが、おじさんは全く意に介さず、涼しい顔をして黙々と屋根の修理を続けていた。

「エリス、その釘を取ってくれ」

玄関戸を修理していた父に言われるまま、私は反射的に目の前の釘に手を伸ばした。それを受け取った父は無言で横を向くと、修理を再開する。



が。
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