ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
右腕を垂直に前へ伸ばし、掌をソレに向けながら意識を集中した。

ブレスレットに嵌め込んだ精霊石が、微かに振動するのを感じ取る。

私の「精神エネルギー」が集中している意識と共にその中へと流れ込み、同時に周囲の気も凝集してくる。

「烈風天駆(ヴァン・ヴォレ・ヴィン)!」

私から発せられた力ある言葉が合図となって、かざした掌から風を起こす。するとバサバサと音を立てながら、吊されたソレがはためいた。

今私は精霊術を使い、ソレを乾かしている最中だった。

『ソレ』とは即ち、私の着ていた服(ローブ)のことである。

浴室で自分の身体を洗うのと同時に服も洗濯し、脱衣所で乾かしているのだ。
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