ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
私は呆然とその場で一人、立ち尽くす。

自ら進んでこの中へ入ろうとは思わなかった。見るからに魔物の巣窟、といった雰囲気の場所だからだ。

「皆さ〜ん、逃げてくださ〜い!」

ドドド…と大きな足音を響かせながら、森の中から良く通る声が聞こえてきた。剣士に同行していた吟遊詩人である。

こちらへ走ってくる男の後ろには、何かが蠢いているのが見えた。木々の影ではっきりとは確認できないが、目を凝らしてよく見てみると、何やら大きな物体も同時に移動してきているようである。

それはまるで、吟遊詩人の後を追ってでも来るような…。





……え?

「ちょッ!? あなた、何を引き連れてきてるのよ!!!」

ソレは周囲の木々をなぎ倒し、地響きを鳴らしながらこちらへ向かってきた。
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