ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
その様子を奥のほうから確かめた私はようやく安堵し、その場へ座り込んでいた。これで一先ずは逃げることができたらしい。

「いや〜、助かりました〜」

ハープを鳴らしながら、吟遊詩人が呑気に声を掛けてきた。

「て、あなたのせいじゃないのよ。大体、何であんなモノが追いかけてくるわけ?」

この男とは初対面だったが、私はつい怒気の含んだ言葉を投げ掛けてしまう。この軽そうな態度が、私の神経を逆撫でするのだ。

しかし当の吟遊詩人は全く悪びれた態度も見せず、相変わらず唄うように私の問い掛けに答えてきた。

「実は〜あなたたちの足が速くて、追いかけられなかったので〜疲れたからちょっと休憩しようかと思って〜そこら辺にあった椅子に座ったら〜なんとそれがロック・マンの足で〜まさかそこに、ロック・マンがいるなんて〜思わなかったしぃ〜……」

「ストップ! 分かった。もうそれ以上言わなくていいから」

頭が痛くなってきた。どうやらこの吟遊詩人に、説明を求めた私が馬鹿だったらしい。
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