社長の息子と恋
『素直にか…。
出来たら頑張ってみるわ。』
そう言ってお袋の前を通り過ぎようとした時、思いきり手を掴まれた。
お袋を見ると、気持ち悪いくらいににっこり笑った。
「らきん家におすそ分けの野菜持ってって?」
手にはもちろんビニール袋。
『はぁ?
俺今帰ってきたばっかなんだけど。』
「いいからいいから!
近くじゃん、よろしくね!」
グイグイと背中を押されてあっという間に外に出された。
赤くなってきた夕暮れの空を見上げて、俺は心亜を想いながらため息を吐いたと同時に歩き出した。