聖夜の軌跡
「俺、今日大事な会議があるから出かけるけど、一人で平気か?」

あたしのベッドの横にある椅子に座って秀は訊いてくる。

お父様とお母様は忙しくて、ほとんど家に居ない。

あたしが成長して、だんだん体の調子が良くなってくるにつれて、家を空ける日も多くなった。


「大丈夫に決まってるじゃないっ。別に秀なんかいなくたって平気なんだから!」

行かないで。

その言葉が出てこない。


いつもそう。


何で言いたいことが言えないんだろう。


「そうか。出来るだけ早く帰ってくるから」


秀はあたしの専属の医者と言うこともあって、あたしの家に住んでる。

「あ、そろそろ行かないと。じゃぁ行ってくるから」

秀は自分の腕に着いた腕時計に目を落とした。
< 3 / 24 >

この作品をシェア

pagetop